
●2月20日、22才の誕生日に待望の2ndフルアルバム『死にながら生きたい』がリリースされます。完成した今の率直な気持ちを聞かせてください。
焚吐:率直に言うと、「ここまで来たか」という感じです。デビュー当時から「作りたいものを作る」という事にこだわってやってきてはいましたけど、ここにきてやっと100%納得のいく表現が出来る技能がつき、心の整理がつき、またファンの方達の支えもあって、今の焚吐がやりたいことを全て詰め込んだ手ごたえのある作品が出来上がりました。デビュー当時は気付けてすらいなかった事も、このアルバムでは体現出来ていると思います。
●気付けていなかったというのはどういう部分ですか?
焚吐:自分をずっと抑圧してきた部分があるんですよ。小中学校でいじめられたり、高校時代には自分が発言しない事で平静を装って周囲から干渉を受けないように防御網みたいなものを張って過ごしていたんですけど、去年の5月にリリースしたミニアルバム『呪いが解けた日』でその殻が一回破れたというか。自分は好きな事をやっていいんだ、焚吐のありのままを出していいんだって事が分かって、今作でやっと吐き出せたのかなと思っています。
●制作はいつ頃から始まったんですか?
焚吐:2017年のみやかわくんとのツーマンライブ、あれも自分の中で大きなターニングポイントだったんですけど、彼は好きな事をやって生きるという事にフォーカスを当てて活動している人間だと思うんですね。それに僕もかなり感化されて、音楽でやってはいけない表現ってないんじゃないかと思うようになったんです。それで最初に出来たのが「愛、愛、愛、愛、そして愛」で、時を同じくして出来たのが「予測可能回避可能」でした。実はこの2曲は『呪いが解けた日』に収録する事も出来たんですけど、その時点での焚吐を語る上ではディープ過ぎるかなと思って取っておいた作品なんです。その後、2018年7月のワンマンライブツアーが終わってすごい気落ちしてしまった時期があったんですけど、気落ちしているからこそ生まれる曲、出来る表現みたいなものもあって、結局ほとんどの曲は去年の8、9月に作りました。
●最初にコンセプト的なものを決めた上でそれぞれの曲を作っていったんですか?
焚吐:全く決めていなかったですね。とりあえず作りたいものを作っていったら、死生観だとか、人生ってなんだろうみたいなテーマについて考える曲が大半を締めていて、意図していないけど結果的にすごく統一感のあるアルバムになりました。13曲中10曲くらいは死についてとか、生について考えている曲なので、かなりディープなアルバムになったんじゃないかなと思います。
●タイトルはどの段階で付けたんですか?
焚吐:「死生観」に関する曲が自ずと多くなっていく中で、同時に「矛盾」というテーマも大きく浮かび上がってきました。最終的にタイトルを決めたのは曲が揃ってからなんですけど、死生観と矛盾のどちらも反映したタイトルって何だろう?という所から『死にながら生きたい』というタイトルが生まれました。
●「死にながら」と「生きたい」の間に、“それでも”という言葉が入っているのでは?と、作品から受け取れたのですがいかがでしょうか?
焚吐:「ここで終わってたまるか!」っていう気持ちは恒久的に抱いていて、それを言語化するとこのタイトルになるのかなとも思います。そもそも「死にたい」と「生きたい」、「死にたくない」と「生きたくない」の4つの感情を同時に持っているんですね。その4軸の中でバロメーターが動いているんじゃないかなって。だからタイトルも、死にたいだけを単刀直入に表す言葉ではちょっと違うし、生きたいだけだと絶望の中に光を見い出す焚吐のやりたい事とは違うなと思って。「矛盾」というキーワードもうまく取り込みながら、ちょうどいい塩梅のタイトルになったんじゃないかなと思っています。
●M-1「天使の寿命」は、インパクトの強い曲が連立する今回のアルバムの中で比較的おとなしめの曲ですが、この曲を1曲目に持ってきた理由は?
焚吐:今回のアルバムは13曲全てアクが強過ぎて、どれを1曲目にするかすごく迷いました。そんな中でこの曲が一番すんなり聴けるというか、いい意味で淡々としてる、押し付けがましくないエモさがある曲だなと思ったんです。「この曲で泣いてください」「この曲で怒ってください」っていう主張を感じない、ちょっと冷たい曲だなと思って。そこが個人的に好みで1曲目にしました。
●歌詞は直球のラブソングになっていると思いますが、歌詞の中の「君」という存在の大切さをアルバムの最初に打ち出したかったのかなとも感じたのですが、そこはいかがですか?
焚吐:この曲に込めた思いは並々ならぬものがあります。でもあえてそれをエモーショナルに歌い上げてはいません。他の曲がエモーショナルな方に振っているからこそ、この曲は淡々としなきゃバランスが取れないと思って、そういう方向性に落とし込みました。1曲目に持ってきたのは歌詞の内容を重視してというよりは、サウンドや歌い方も含めて曲全体の世界観が今回の1曲目にふさわしいのかなというところで選びましたね。
●アレンジは、以前「コントロールミー」「返してよ」「時速40000kmの孤独」なども編曲された高田翼さんですが、高田さんらしいグルーブだったり、淡々とした中にもヒューマンな温かさを感じるサウンドですね。
焚吐:そうですね。ここまでアコギ主体の曲って、これまであるようでなかったんじゃないかなと思います。『呪いが解けた日』に収録した「返してよ」というアコギをフィーチャーしたバラードがあったんですけど、あれはラストのサビでいきなりロックに移る構成だったのでアコギ主体のアレンジという感じでもなかったですし。この曲は高田さんの挑戦みたいなものも感じて、最初にアレンジを聴いた時に、「これ3ランクくらい上がったんじゃないか!」っていうくらい、物凄い新鮮なサウンドになってるなと感じました。例えばギターのボディを叩く音をパーカッションの一部として取り入れたり、高田さんが元々ギタリストという事もあって、僕にはない引き出しを沢山取り入れてくれて繊密なアレンジになったと思います。

●2曲目は最新シングル「量産型ティーン」ですね。やはりこの曲はアルバムの中でも重要な1曲なのでしょうか?
焚吐:最新シングルって自分の中で伝えたい事がリアルに表れている作品なんですよね。アルバムを作ってまた二転三転した部分はあるけど、やっぱりファンの方にとっても、焚吐にとっても、アルバム前の最新作を冒頭に出しておかない事には、これからに繋がっていかないというか。2曲目にこの曲を持ってくる事に意味があるのかなと思います。
●ファンの方のこの曲に対する反応ってどんな感じでしたか?
焚吐:自分の言いたい事を代弁してくれたって声が多かったですね。例えば「私は自分の事を過小評価しがちで、普段から自分の意見を押し通さない人間だけど、この曲を聴いて少し我を通していいんだと思うようになりました」とか。「自己主張が大事なんだって事に気付くきっかけになりました」っていう意見が沢山届いて、そこは自分的にも有り難かったです。
●3曲目はさらに勢いを増したアッパーなナンバー「見切り発車」ですね。アレンジは、ぼくのりりっくのぼうよみでもお馴染みのケンカイヨシさん。焚吐さんとは初めてのコラボですね。
焚吐:はい。この曲は語る事があり過ぎるんですけど。僕、ケンカイさんとはずっとお仕事がしたくて、実は去年の春先頃からずっと曲作りは一緒にしていたんですけど一番いいタイミングで出したいという気持ちがあって、今回のアルバムで初コラボという事になりました。まず友達として仲良くなって2人で遊ぶ時間を設けて、そこで築いた関係性が音に表れてくるのかなみたいな感じで、プライベートでも沢山関わった人物です。この曲のアレンジは、ケンカイさんのお家にお邪魔して合宿して作ったんですよ。詞曲は元々出来ていたんですけど、アレンジに関しては意見を交換しながらやった方が一番早いからって事で。去年の11月のワンマンライブの次の日、11月27日にアレンジ作業に取り掛かり始めたので、ライブの熱量みたいなものも持ったサウンドになっています。
●詞曲が生まれるきっかけが何かあったんですか?
焚吐:人生筋書き通りにいかないな、そもそも人生に筋書きなんてないなって思うんですね。「こういう人生を歩みなさい」ってレールを敷かれた人生なんて嫌って人もいるけど、僕はどちらかというとレールがないからこその苦しみが大きいと感じる事が多くて、どこに進んでいいか分からない、どうすればいいか分からない、何が正解だったか終わった後にすら分からないみたいな事が多過ぎて嫌になってしまったんです。人生って伏線の回収が出来る時と出来ない時があって、やりっぱなしの時が多いというか。漫画でいう「打ち切りがきたから全部ほっぽったまま終わり」みたいな。人生もそれと同じで、きっと伏線の半分も回収出来ないまま70才、80才で死んでいくんだろうな〜とか。この曲はそういう憤りを音楽にしてみました。
●その辺りの思いはケンカイさんに前もって話しつつアレンジを組み立てていったのでしょうか?
焚吐:ケンカイさんは、歌詞の世界観を音にどれだけ反映するかをすごく大事にしてくれる人で、今回効果音がたくさん入っているんですけど、それも僕の思いを元に考えてくれているんです。例えば幼少時代の事を歌っている箇所で子供の泣き声を入れてみようとか、2番のAメロにチャイムの音が入ってるんですけど、それも僕が学校というキーワードを出したから入れてくれていて、しかも学校にはトラウマがあるから普通のチャイムの音じゃなくて、わざと不協和音にしてみようとか。歌詞とのリンクを深く考えてくれる人です。だからまず曲を作る前に一緒にマリオカートしながら、5時間くらいぶっ続けで喋った後に、「やっとこれで編曲に取り掛かれるね」みたいな。ディスカッションを物凄く大事にする人なので、そこは僕的にも助かっています。
●次の曲も含め、そこまで密なやりとりがあったからこそ、あそこまで高いクオリティの楽曲に仕上がっていったんでしょうね。
焚吐:はい。聴いて頂ければ1曲の中の情報量の多さとか、思いの強さみたいなものを感じて頂けると思います。
●次の「ナンバーツー」もケンカイさんと一緒に詰めながらアレンジしていったのでしょうか?
焚吐:「見切り発車」と同じくケンカイさんの家で合宿して作った曲です。11月のワンマンライブが始まる2週間前に2泊3日くらいしました。詞曲は8、9月の気を病んでいた時期に書いたもので、このまま自分の気持ちを貯め込んで過ごしていたら本当に死にそうだと思って作りました。ここまで暗い方向に振り切った曲も、これまでありそうでなかったと思いますね。あとポエトリー主体の曲を書きたかったんですよ。元々ラップっぽいラップがあまり好きじゃないというか、トラックに100%追従する形で乗っかってるラップの曲を聴いても個人的にあまり刺さらないんですね。伝えたい思いが先行して、音がその言葉に自然と追従してきているというか、やっぱり曲の中で言葉がキングじゃなきゃ気が済まないんです。そんなポエトリーをフィーチャーした曲を作ってみたいと思いました。
●ダウンした気持ちを作品にする事で救われる部分もあったのでしょうか?
焚吐:歌というより叫びでしたね。演説している感じが強くて、ラジオボイスにしている部分もそういう雰囲気を醸し出していると思います。やはり根幹にカッコいいラップを歌いたくないってところがあるので、それが前面に出たのかなと思います。
●5曲目の「シュレディンガー」をアレンジしたnishi-kenさんは、前ミニアルバムのタイトル曲「呪いが解けた日」もアレンジされた方ですね。イントロのシンセの音色や、キラキラしたEDM感などnishi-kenさんらしいサウンドですね。
焚吐:nishi-kenさんの世界観でやってもらったらどうなるかと思って、nishi-kenさんに一任するかたちでアレンジしてもらいました。「2番のAメロにこういう音色を足してください」みたいな細かいリクエストはあったんですけど、初稿で期待以上のものを上げてくださったので、ほとんど直しなくそのまま進めて頂きました。メッセージ性としては、とにかく聴き手に寄り添う曲を書きたいと思ったんです。死に対して肯定的な感情を抱く人ってあまりいないじゃないですか。でも本当に死にたいと考えている人にとっては、「ナンバーツー」もまさにそういう世界観なんですけど、死こそがその人の救いになっている場合があって、あまり死を否定すると逆に死にたくなるのかなって。「自殺なんて軽々しく口にするんじゃありません」って言われた反動で死ぬ人がいるように。だから同じく痛みを感じる者として自分が言える事ってなんだろうと考えながら作っていきました。
●言葉はスラスラ浮かんできたんですか?
焚吐:この歌詞は手紙を書くイメージに近いというか、気取った表現というより、そういう人に今すぐ読んで欲しい即効性のある曲にしたかったんですね。何度も聴くうちに深く解釈していく内容というよりも、一度聴いてすんなり入ってくるという方を意識して書きました。
●だからなのか、とても訴求力のある歌声になっていますよね。
焚吐:アー写は僕が屋上に居る写真なんですけど、同じく屋上階で生と死の間を彷徨っている人に届けばいいなというか、あなたの考えている事は間違いじゃないけど、「僕はあなたに生きて欲しい」という思いが伝わるように歌いました。
●6曲目の「愛、愛、愛、愛、そして愛」の編曲は、前シングルのC/W「トウメイニンゲン」をアレンジしたKOUICHIさんですね。こちらはマイナー調の激しいアッパーなナンバーになっていますね。
焚吐:Aメロ、Bメロはいい意味でチャラいクラブ調のサウンドになっていて、サビになるとテンポが倍になってロックに移行する攻めたアレンジになっていると思います。
●より熱量の高いボーカルも印象的でした。ここまで「愛」というワードを連呼する焚吐さんも珍しいですね(笑)
焚吐:これは2017年に書いた曲なんですけど、当時愛こそ全て、この広い世界の中で愛する人1人を見つけられる事こそが幸福の最終形みたいな考え方が蔓延している気がして、なんだか押し潰されそうになりながら生きていたんです。自分は元々そんなに頻繁に恋愛ってものが出来ない人間だし、そんなに軽々しく愛を歌うなよみたいな。ちょうどその頃、渋谷のスクランブル交差点の巨大ビジョンに、「愛こそ全て。それ以外言うことありません」みたいな自分が観ていて一番病むタイプのMVが流れているのを目にして、それって陰キャに優しくないよな〜って嫌悪感を感じたんです。そんなフラストレーションをもろにぶつけた曲になっていますね。焚吐としては片思いに幸あれなんて1ミリも祈ってやらないからなって気持ちで書きました。でも本当は羨ましいって気持ちもどこかにはあって、だから曲にしないとやってられないって事で生まれた作品になっています。
●それでボーカルはこんなに叫んでいるんですね!
焚吐:この曲はレコーディングでも熱量が入り過ぎてエンジニアの方に引かれるくらいでした。そこまで歌う?みたいな(笑)。ラストのサビで声をがならせる部分があるんですけど、思いが伝わり過ぎて痛いよみたいな。でもそれくらい気持ちのこもった作品なので、渾身のボーカルテイクが録れたと思います。

●7曲目の「普通の人」の歌詞もディープな内容になっていますね。
焚吐:この曲はとにかく思いが強いというか、このアルバムの中で一番ディープな、焚吐の本質を歌っている曲だと思っていて、だからこそ繊細に作っていきました。自分は普通の人間じゃないんじゃないかみたいな違和感、気持ち悪さを小さい頃からずっと抱えていて、それを1回真っ向勝負で歌にしたらどうなるかみたいなところで作っていった曲です。
●デモはアコギで作っていったんですか?
焚吐:そうですね。打ち込みは入れないで、アコギの弾き語りだけで作りました。
●最初は静かに始まって、サビではストリングスもフィーチャーされた魂が揺さぶられるアレンジになっていますが、レコーディングはいかがでしたか?
焚吐:この曲は「ナンバーツー」と同じく歌じゃないですね。僕の中では叫びに近いというか、レコーディングブースに入って歌うぞっていう気持ちよりチキンレースに近い感じでした。どれだけ自分の本性を叫べるかみたいなところでやり切った作品です。歌い終わった後はネクストステージに行った感じがありました。これを歌う事で次の作品に繋がってくるし、本当に嘘偽りが1ミクロンもない曲なので、絶対に深く刺さってくれる自信があります。
●8曲目の「魔法使い」はシングルに収録したバージョンのまま収録していますか?
焚吐:はい。僕が高校生の時に亡くなった母への想いを綴った曲になっていますが、この曲がきっかけで死生観についてもっと掘り下げていいんじゃないかと思えたので、これは絶対アルバムに入れなきゃいけない、この曲を入れなきゃ嘘になるな、と。「量産型ティーン」と同じくこのアルバムの核になってくれる曲だと思います。
●一発録りでレコーディングされた曲でもあるので、その息遣いも改めて感じ取って欲しいですね。
焚吐:作った温度感みたいなものが一番伝わるのはやっぱり一発録りだと思いますね。「普通の人」も一発録りに近い勢いで歌った曲ではあるので、この2曲が繋がってるところに意味があると思いますし、是非通して聴いて頂きたいです。
●次の「トリミング・トリミング」と「死、予約します」は、Ra-Uさんのアレンジですが、この方も初めてですよね?
焚吐:はい。「トリミング・トリミング」は地で焚吐の性格の悪さが表れた曲になってますね(笑)。僕って見るからに陰キャなので、「陽キャ批判」みたいな曲がアンチテーゼであっても面白いと思って作った曲です。「愛、愛、愛、愛、そして愛」にも通ずるんですけど、満たされているものを見た時の嫌悪感みたいなものがやっぱり陰の民は強いんですよ。だからこそ思いっきり皮肉るというか。1stアルバムに収録した「ハイパールーキー」も作風は近いんですけど、自分が陽キャになりきる事で陽キャを同じ視線から批判出来る、陽キャ文化を根絶やしにしたいみたいなところで作った曲になっています。
●作品性としては今までにない感じの、スタイリッシュでポップな曲になっていますよね。
焚吐:この曲と次の「死、予約します」は、とにかくチャラくて闇を一片も感じさせない明るいだけのサウンドにしてくださいとお願いしました。それが120%表れたと思います。皮肉る系の歌詞ってサウンドも暗い方向に持っていって最終的に闇落ちみたいな感じが多いけど、この曲は明るいだけで通した方が逆に焚吐のえぐみみたいなものが伝わると思いました。あと「トリミング・トリミング」は途中でKAWAIIポップの要素を入れてくださいともお願いしました。アイドルが歌っても差し支えないくらいの明るさを重視して作った曲になっています。
●女性コーラスはどなたですか?
焚吐:TWICEなどのコーラスもやっているIKUCO Tsutsumiさんという方です。K-POPのコーラスワークをやっている方の声が入るとどうなるか、化学反応を楽しんでみました。
●この曲はレコーディングも楽しかったのではないでしょうか?
焚吐:これは楽しかったですね。「量産型ティーン」と「魔法使い」は既存曲ですけど、それ以外の新曲の中で一番始めにレコーディングしたのがこの曲でした。ノリにノッてますね(笑)
●引き続き同じテイストのポップ感の強い曲「死、予約します」は衝撃的なネーミングですね。
焚吐:タイトルのわりに全然コイツ死ぬつもりないなって曲が作りたいと思いました。あと「人生って自殺を明日へ先延ばしにするゲームだよな」みたいな話を友達としていて、そのゲームを続けながら誰もが100年後には死んでるよね、って。裏を返せば、どうせいつかは死ぬんだから今楽しく生きようよみたいなメッセージを込めています。

●アレンジは何かリクエストされたんですか?
焚吐:最初はお任せで作ってもらって、リテイクで詰める所が多かったですね。最初どっちかっていうとバンドサウンド寄りだったんですよ。ドラムのグルーブも結構生ドラムに近い感じだったんですけど、もっと打ち込みでバカな感じで大丈夫ですと伝えました。あと間奏にチャイナ要素入れてくださいというお願いもしました。それと紐付けて冒頭の「Fu〜」って声だったり、2番サビ終わりの「Ha〜」という遊びのコーラスを入れたりもしています。今回のアルバムは遊び心もすごい重要視していて、本来デモには入っていなかった声などもレコーディング現場でどんどん入れていきました。「死、予約します」も落ちサビっぽい所で「死にま〜す」って天の声みたいなのが聴こえてくるんですけど、どういうテンション感で「死にます」って言えば一番死なない感じが出るのかなとエンジニアの方と話しながら録っていきました。
●「トリミング・トリミング」と「死、予約します」は、皮肉や後ろ向きな歌詞と明るくポップなサウンドとの対比が魅力ですが、このような陰と陽が織り混ざった作品を今後の焚吐作品にも期待してしまいます。
焚吐:確かに「死」というワードから連想されるものって「負」でしかないけど、この曲はどうせ死ぬから今楽しもうというポジティブなメッセージに置き換えられているので、そこは成功だったと思いますね。
●続いてもRa-Uさんアレンジの「予測可能回避可能」。ゆったりと始まって、ラストは熱くボーカルが高揚していく存在感の大きな曲ですね。
焚吐:このアルバムの中では2番目に古い曲になります。今まで話してきたバックグラウンドも含め、自分の中でいじめの存在ってやっぱり大きいんですよ。僕は中学時代にいくら嫌な事があっても学校には通っていたんですね。避難する事を支持する曲って沢山あるけど、不登校にならずに歯を食いしばって生きてる人を支持する曲ってないなと思って、どっちが正解とかはないんですけど、どちらも讃えられなきゃフェアじゃないなと思って。同時に昔の自分を励ますという思いも強いですね。あの頃歯を食いしばったからこそ生まれる歌も増えたのかなと思うと、過去の自分を憎みきれないというか。だからこそあの頃の自分に向けてっていう意味もあります。
●レコーディングはいかがでしたか?
焚吐:とにかくあの頃の自分が救われるような温かい歌い方が出来たらいいなと思って歌いました。13曲の中で屈指に丁寧に歌った曲ですね。あとデモの段階ではDメロ部分は全部メロディが付いていたんですけど、あえて一部ポエトリーにしました。
●12曲目の「だって全部僕だから」は今回のアルバムの「矛盾」というキーワードの1つの答えを導いているような曲でもあるのでしょうか?
焚吐:まだ12曲目なんですけど、この段階で焚吐が見い出した「矛盾」というテーマの答えを歌っている総まとめ的な1曲にはなっています。矛盾しているから悪いという事は1つもない。誰しも明るい面があれば暗い面もあって、それは表裏一体。逆に100%ポジティブな人間の方が怖いと思うし、矛盾しているからこその人間だっていう所を前面に押し出した曲になっています。
●ポジティブなメッセージとして受け取れる曲になっていますよね。
焚吐:そうですね。あと1番のサビに “バラバラ もうガタガタ なのに惹かれた 得体の知れない憎めない そいつの名前が命 生涯僕らを振り回す張本人”という歌詞があるんですけど、説明不可能だからこその命なんだっていう所はこの曲の大きな命題になっています。やっぱり人には浮き沈みやムラみたいなものがあって、だからこそ惹かれるんだろうなって。聞いた話によると恋愛も押し引きが重要っていうじゃないですか。押してばかりじゃウザがられるし、引いてばかりでも愛想を尽かされるみたいな。そう考えると今後ラブソングを書くにあたっても、死生観の曲を書くにあたっても、矛盾という命題はこれからも掲げていくんだろうな〜と感じていますね。
●そして最後は「シャボン王子と無間地獄」。「だって全部僕だから」でポジティブに終わると思いきや、なかなかにシュールな曲が最後に入っていて驚きました。
焚吐:狙い通りです(笑)
●こういう物語調の歌詞も初めてですよね。
焚吐:ここまで露骨にやったのは初めてですね。童話っぽい曲を書いてみたいところもあって、そしてその童話っぽい歪なアレンジを出来るのはササノマリイさんしかいないだろうって事で頼みました。「ナンバーツー」と同じ頃に出来た曲で一番精神的に落ち込んでいる時期、焚吐という人間に光明ってものがひと筋も射していない時期に書いた曲です。「量産型ティーン」と言ってる事はわりと近いんですよ。しったかぶったり、他人を値踏みする様な人間がとにかく嫌いで、そういう人に制裁を加えるにはって考えた時に作った曲です。だから歌詞の内容は主人公が絶対に救われない落ちにしていて、これを当事者が聴いたら胸が痛くてもう二度と聴きたくないって思わせるような、いい意味でも悪い意味でも爪痕を残す曲にしたいと思いました。
●そういう曲を敢えて最後に持ってきたのは何故ですか?
焚吐:曲順を考える上で、この曲の持って行き所を色々考えたんですけど、あまりにも他の曲と系統が違い過ぎるし、多分最後に持ってこないと収拾がつかなくなるなという事で最後に入れました。あとパラレルワールドを見せたかったというのもあります。12曲目の「だって全部僕だから」で矛盾というものを受け入れられたライトな焚吐は見せられたけど、こういう落ちもあったんだよみたいな。ゲームって選択肢によってハッピーエンドかバッドエンドになるじゃないですか。でもここは敢えてトゥルーエンドを描きたかったというか、本当は怖いグリム童話みたいな、そんなイメージで作りましたね。曲間にもこだわっていて、「だって全部僕だから」に入る前にかなり間を空けて、さもこの曲でラストなんだなと感じさせつつ、もう1曲入ってるっていう流れがすごく上手く組めたなと感じています。
●納得のいくアルバムが完成した後、今後の焚吐さんはどうなっていきますか?
焚吐:毎回言ってるんですけど、もっとディープになっていきたいですね。今回やりきった感じはあるけど、もっと出来る事があるんじゃないのかとも思いますし、同じ事はしたくないと思っています。前向きでも後ろ向きでも進む事に意味があって停滞したら死ぬなと思っているので、とにかく変わり続けたいし動き続けたいという気持ちが強いです。デビュー当時からそういう気持ちはあったんですけど、3年間やってきて今がピークなんじゃないかなと感じています。
【初回限定盤】
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